研究概要

はじめに

 資料先端研究室のスタッフは、学内の研究教育を横断的に支援する総合学術博物館に所属する一方、大阪大学大学院理学研究科化学専攻の兼任講座として、「ナノ空間物理化学」という新しい研究分野に取り組んでいます。

  「空間と分子間相互作用」をキーワードに、ナノ空間における物質の振る舞いを分子レベルで明らかにすることを目指します。固体核磁気共鳴(NMR)分光法 を中心とした最新の実験技術を駆使し、さらに有機合成や計算機実験の手法も取り入れながら、固体内に構築される微小空間に 閉じ込められた分子集合状態の動的挙動や性質、化学反応などを物理化学的見地から研究します。また、ナノ空間を用いて特異 な物性を示す新しい分子集合体の創製を目指します。


ナノ空間物理化学

 分子集合体が示す様々な性質を「物性」といいます。また、固体内や分子集合体に構築 されるナノメートル(1メートルの10億分の1)程度の空間を 「ナノ空間」と呼びます。これは私たちの肉眼で見ることはできませんが、分子にとっては比較的自由にアクセスできる空間です。

 このようなミクロな空間に閉じ込められた分子集団は、壁面と接する分子の割合が大きくなるため、分子レベルでみれば空間を作る壁との相互作用が強調され、バルクとは異なる特異な分子間構造や物性を示します。例えば コップの中の水は通常0℃で凍りますが、ナノ空間に閉じ込めると、-20~30℃まで凍りません。もっと小さな空間では、もはや私たちが知っ ている水とはまったく異なった性質を示すようになります。


水の性質


 資料先端研究室では、このようなナノ空間に閉じ込められた分子集団の性質(熱的、電気的、磁気的 性質)がどのようなメカニズムで現れるのかを分子の動き(分子運動)を通して調べています。また、“空間”によって分子の並び方をコントロールすること で、プロトン伝導、電子伝導、1次元スピン鎖などの新しい機能を持った材料の創製も目指しています。


ここが面白い!

 目では見えない非常に小さな孔の中では、けなげにも分子たちがお互い手と手を取り合って自分たちの性質や構造を変えながら居心地の良い状態 を作り出します。そして、吸着分子は構造や集合状態の変化を、融解や相転移、イオン伝導や拡散、あるいは吸着構造の変化など、さまざまな形で自己主張してきます。こ のような分子の振る舞いを通して、「空間(広がりと形状)」が分子間相互作用に与える効果や働きを体系付けることで、分子集合体の性質と分子間相互作用の 関わりをより定量的に理解することができます。また、得られた知見をもとに、新しい機能をもつ分子集合体の創製にもつなげることが可能です。このよ うに、「ナノ空間」を舞台とする物理化学、材料化学は基礎化学の観点からも非常に興味深く、発展性のある学問分野です。「少しばかりの不安と大きな好奇心」、そして皆さんのアイデアが新しい研究の扉を開きます。皆さん、一緒にこの興味 深いナノワールドを探求して みませんか?


”大学博物館”ということ

 さて、皆さんの中には、「博物館でどんな研究をするのか?」、「博物館で研究ができるのか?」など、「博物館」ということに疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。博 物館というと「古いものを集めてきて、それらを整理し、展示するところ」というのが一般的な認識かもしれません。確かに、それも博物館の重要な役割で すが、大学博物館では、「教育研究」が重要なミッションのひとつとなっています。(大学博物館の詳細については、大阪大学総合学術博物館のホームページをご覧になってください)。

 大阪大学総合学術博物館では、大学に残る貴重な資料の収集・整理と資料展示を通して、新しい価値の再発見や研究シードの発掘につなげています。さらに、サ イエンスカフェや小学生科学体験教室などを実施することで、地域に密着した社会貢献の場として、大学のアウトリーチ活動の一翼を担っています。このように大阪大学総合学術博物館 は大阪大学の研究成果の社会への発信基地として、多種多様にわたる研究教育に関 わっています。

 当研究室のスタッフは、企画展示や科学教室の企画・実施をはじめ、様々な博物館業務に従事します。一方で、学術的な 基礎研究も行い、学会発表や学術論文として学術研究の成果を発信しています。当研究室に所属する学部4年生や大学院生は、理学部ならびに大 学院理学研究科の学生として、「純粋化学」を基礎とした学問と研究に取り組んでいただきます。当研究室では、「ナノ空間物理化学」 を実践するための環境が十分に整備され、構造物理化学を主体とする高い研究アクティビティを有しています。将来、皆さんが研究職やアカデミックの分野で活躍できる力を養うことができると信じています。



研究紹介

共同研究

以下のような大学および研究機関と共同研究を行っています。

  • 東京工業大学応用セラミックス研究所・川路研究室
  • 信州大学理学部化学科・飯山研究室
  • 東京電機大学工学部環境化学科・石丸研究室

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