大阪大学総合学術博物館設立記念展
AN EXHIBITION CELEBRATING
THE FOUNDATION OF
THE MUSEUM OF OSAKA UNIVERSITY
いま阪大で何が?―人間・地球・物質
OSAKA UNIVERSITY NOW:
Man, Earth, and the Material World
会期 /10月12日(土)〜10月20日(日)10時〜17時
会場 /大阪歴史博物館・NHK 大阪放送会館アトリウム
入場無料
お問い合わせ先/大阪大学総合学術博物館 電話 06-6850-6715
主催/大阪大学総合学術博物館 共催/大阪歴史博物館・NHK 大阪放送局
講演会「懐徳堂・適塾と大阪の教育研究」
日時/10月12日(土)13時30分〜15時30分
会場/大阪歴史博物館4階講堂 電話 06-6946-5728
講師/(財)国際高等研究所所長(大阪大学前総長)金森順次郎先生
「大阪と自然科学―大阪のもう一つの伝統」
主催/大阪大学総合学術博物館
共催/大阪歴史博物館
同時開催
大坂の学問所「懐徳堂と適塾」展
懐徳堂資料展
会場/大阪歴史博物館2階第1会議室
会期/10月12日(土)〜10日20日(日)10時〜17時
※10月15日(火)休館・入場無料
適塾資料展
会場/適塾(大阪地下鉄・京阪電車「淀屋橋駅」下車) 電話 06-6231-1970
会期/10月12日(土)〜10日20日(日)10時〜16時
※10月15日(火)休館
観覧には適塾参観料〈大人250円、学生130円、生徒70円〉が別途必要です。
大阪大学総合学術博物館
〒560-8532 豊中市待兼山町1-5 電話 06-6850-6715
ホームページhttp://www.museum.osaka-u.ac.jp
ごあいさつ
本年4月に大阪大学総合学術博物館が設立されたことを記念して、特別展「いま阪大で何が?―人間・地球・物質」を開催いたします。
大阪大学は1931年(昭和6)に大阪帝国大学として創設されましたが、
江戸時代の大坂の学問所として多くの思想家や科学者を輩出した懐徳堂と適塾とを精神的源流とし、
「地域に生き世界に伸びる」をモットーとして社会に貢献し、学界をリードする総合大学に発展してまいりました。
総合学術博物館設立記念展は、大阪大学における教育研究の現状を紹介するとともに、未来を展望しようとするものです。
最初の「バーチャル適塾(てきじゅく)・懐徳堂(かいとくどう)」のコーナーでは、江戸時代の自由で先進的な両学問所を最新のデジタル技術により再現しました。
続く20チームのブースでは、約4,500人の教職員と2万人余りの学生からなる大阪大学の活動のごく一部をわかりやすく紹介するよう努めました。
ありのままの姿をご覧いただくために、目的を達成した研究も、まだ試行錯誤(しこうさくご)の段階にある研究も展示いたしました。
各ブースの説明を聞き、展示品に触れ、簡単な実験に参加していただくと、科学することの楽しさ、
学問することの面白さを体験していただけるに違いありません。出版活動のコーナーでは、ここに紹介できなかった多くの業績を展示しています。
さらに隣の大阪歴史博物館では「懐徳堂資料展」、北浜3丁目の適塾では「適塾資料展」を開催していますので、ぜひお出かけください。
最後になりましたが、今回の設立記念展の開催にご協力くださいました大阪歴史博物館とNHK大阪放送局、
さらにご支援いただいた学外学内の多くの方々に深く御礼申し上げます。
2002年10月
大阪大学総合学術博物館
館長 肥塚 隆
ブース「バーチャル適塾・懐徳堂」
1931年(昭和6)に開学した大阪大学には、ふたつの源流があります。
1724年(享保9)に大坂の有力町人によって設立された学問所である懐徳堂(かいとくどう)、
そして、1838年(天保9)に蘭学者の緒方洪庵(おがたこうあん)によって創設された適塾(てきじゅく)です。
いずれも、大阪文化や日本の歴史に大きな役割を果たしました。2001年(平成13)に創立70周年を迎えた大阪大学では、
マルチメディア・コンテンツ実行委員会がこのふたつの源流を最新のデジタル技術によって顕彰する事業を行いました。
それが、「バーチャル適塾(てきじゅく)・懐徳堂(かいとくどう)」です。それぞれの学舎をコンピュータグラフィックスによってバーチャル空間に再現し、
塾生や貴重資料のデータベースを作成するとともに、高精細ハイビジョン作品「知の光彩・未来へ」を公開しました。
このブースでは、俳優の榎木孝明さんをナレーターとする「知の光彩・未来へ」のビデオ(15分間)をご覧になるとともに、
パソコンを操作して適塾と懐徳堂の建物内を探索し、また両学問所のデータベースをのぞいてみてください。
制作:大阪大学創立70周年マルチメディア・コンテンツ実行委員会
協力:文学研究科懐徳堂センター
凸版印刷株式会社
ブース 出版活動 大阪大学出版会
大阪大学は、財団法人大阪大学後援会の事業の一環として、1993年に出版会を発足させました。
大阪大学を中心とする学術研究活動の成果を公表することにより、教育・研究・啓発活動に貢献することを目的として、
現在までに約90点の学術書・教養書・教科書・事典などを出版してきました。
2001年には、大阪大学創立70周年記念出版として、話題性豊かな最先端の研究をわかりやすく解説するシリーズ『大阪大学新世紀セミナー』を刊行し、
また新たな教科書シリーズ『大阪大学新世紀レクチャー』の刊行も進めています。
ぜひ、大阪大学の出版物を手にとって、ご覧ください。
20チームの展示内容
人間
- 多人数共有型立体ディスプレイによる洪庵の薬箱の表示
北村 喜文、 岸野 文郎 (情報科学研究科 マルチメディア工学専攻)
阪大独自のまったく新しい3次元立体ディスプレイ装置で、緒方洪庵(おがたこうあん)が愛用した薬箱をこのディスプレイでご覧下さい。
3人以上の利用者が、自由に動き回りながら、おのおのの視点からゆがみとちらつきのない立体映像で詳細に観察することができます。
- 周囲360°が見える目と仮想体験ツアー
谷内田 正彦、 長原 一 (基礎工学研究科 システム人間系専攻)
全方位視覚センサは、周囲360°をリアルタイムに撮影可能で、見る人の興味に応じた自由な視野と映像を提示することができます。
時間的あるいは空間的に離れた場所でも、あたかもそこにいるような仮想旅行ができるシステムを体験してみて下さい。
- マウスやゼブラフィッシュに、私たちの体のつくり方をたずねる
近藤 寿人、 目野 主税、 蒲池 雄介 (生命機能研究科)
みなさんの体をつくり上げる仕組みを明らかにする研究です。遺伝子(いでんし)操作を用いてマウスの突然変異体をつくって、体の左右をきめる仕組みを明らかにします。また、ゼブラフィッシュの突然変異体を使って、体の一部を再生させる可能性をさぐります。
- グリーンマウス・・・遺伝子語は種(しゅ)をこえて
岡部 勝、 伊川 正人 (遺伝情報実験センター)
発光オワンクラゲの緑色蛍光(けいこう)たんぱく質をつくる遺伝子を導入した「グリーンマウス」は、体のほとんどの細胞から蛍光を発します。
このネズミの幹(かん)細胞を野生型のネズミに移植することにより、移植医療や再生医療などの基礎研究が進められています。
- 毒にも薬にもなる自然界の化合物−有機化学で探るその正体とはたらき
楠本 正一、 長谷 純宏、 村田 道雄 (理学研究科 化学専攻)
バクテリア、カビ、プランクトンなどの微小な生物がつくりだす有機化合物は、毒にも薬にもなるものが知られています。
このような天然化合物の生物体内でのはたらきを解説します。また、細胞の表面で重要な役割を演じる糖鎖分子についても説明します。
- スポーツにおける頭、顔、顎(あご)、口の役割とその外傷の予防
前田 芳信、 山田 純子、 三浦 治郎、 佐藤 元 (歯学研究科 口腔総合診療部)
運動をしているときの頭、顔、顎、口でのケガ発生の原因を明らかにし、ケガを効果的に防ぐことのできるマウスガードを紹介します。
ケガの応急処置や新たなガード材料を開発するための研究方法などを説明し、マウスガードの作製も実演します。
地球
- 宇宙からのメールを読もう
板橋 隆久 (核物理研究センター)、 林田 清 (理学研究科 宇宙地球科学専攻)
宇宙線や放射線が通った跡を観察するスパーク・チェンバーを展示します。飛んでくる様子を確認し、装置の中に手を入れ、
宇宙線が身体を通過することを体験してください。また、X線天文衛星の模型と天体写真を展示し、X線天文学の最近の話題も紹介します。
- 隕石(いんせき)をみる:X線CT-3次元顕微鏡
土'山 明 (理学研究科 宇宙地球科学専攻)
コンドライトと呼ばれる隕石を分析すると、太陽系が生まれた当時の星雲の様子がわかります。隕石中の元素の同位体(どういたい)を分析すると、
隕石ができた年代を求めることもできます。隕石を丸ごと観察する強力なX線を用いた最新の分析方法について解説します。
- 地底から外惑星(がいわくせい)まで:電子スピン共鳴(ESR)年代測定の展開
谷 篤史、 山中 千博、 池谷 元伺 (理学研究科 宇宙地球科学専攻)
ミクロな電子を測定してマクロな地球や惑星について調べる有力な手段であるESR年代測定法と、
その多方面にわたる応用を紹介します。また、画像計測装置の一部を展示し、ESR測定を実演するほか、年代測定に使用した試料の一部も展示します。
- ナマズの地震予報は当たるか?:前兆(ぜんちょう)現象の未科学を科学に!
浅原 裕、 谷 篤史、 池谷 元伺 (理学研究科 宇宙地球科学専攻)
地震の数日から数時間前にナマズがあばれるという民間伝承(でんしょう)があります。これらは電磁現象として説明できます。
「阪神大震災」の前兆電磁現象を再現する実験の写真やビデオを紹介し、「ナマズの活動量の自動計測」についても実演します。
- 燃える氷!?−メタンハイドレート
大垣 一成、 菅原 武 (基礎工学研究科 化学系専攻)
メタンガスを水の分子が包み込んだ化合物は海底に大量に存在します。まるで氷のように見えますが、
火をつけると燃え上がります。メタンをエネルギーとして活用し、代わりに地球温暖化の原因の二酸化炭素を深海底に閉じ込める夢のプランを提案します。
- 自然がつくる砂の模様:風と水の流れの足あと
関口 智寛、 遠藤 徳孝、 砂村 継夫 (理学研究科 宇宙地球科学専攻)
砂漠に雄大な景色をつくる砂丘の群れやその表面の美しい風紋は、風が砂を動かすことによって生じます。
海や川の底にできる砂の模様は水の動きがつくります。それらの写真を展示し、砂の模様と風や水の流れとの関係を説明します。
- 国産木材の総合利用と山のグランドデザイン策定
今井 克彦、 古川 忠稔 (工学研究科 地球総合工学専攻)
総合的・多角的な中低品質木材利用技術の開拓・事業化、林業経営の健全化、循環形バリアフリーのまちづくり等を、
いかにして実現するかを説明します。また、間伐材(かんばつざい)などを利用した特殊な木製フレームを用いて、観覧者に建造物をその場で組み立ててもらいます。
- 旧日本軍作製の兵要(へいよう)地誌図
小林 茂 (文学研究科 文化形態論専攻)
人文地理学講座が所有する旧日本軍作製の軍事作戦用の地図(兵要地誌図)に関して、
目録の作製とそれを利用した共同研究を進めております。兵要地誌図の作製過程や盛り込まれている情報を分析し、
その地域の環境変化の解明など、地図利用の可能性を示します。
物質
- ガラスのオブジェで科学を学ぼう!
松川 博昭 (産業科学研究所 ガラス工作室)
ガラスの実験器具は科学の発展に大きく貢献しています。
気圧や部屋の温度をはかる小さくてかわいらしいガラス器具や人工的に「いなびかり」を発生させるガラス製のボールなどのオブジェを展示し、
それにひそむ科学を楽しみながら考えてもらいます。
- レンコンのような孔(あな)がたくさんあいた金属
中嶋 英雄、 池田 輝之、 玄 丞均、 中居 由忠、 村上 健児
(産業科学研究所 金属材料プロセス研究分野)
ドロドロにとけた金属にガスを溶かし込み、一つの方向から冷やすと、
長く伸びた小さな孔がたくさん同じ向きにそろった状態で固まります。非常に軽くしかも強いので、いろいろな応用が考えられます。
展示のゴルフパターで、そのクッション性を実感して下さい。
- 紫外光発生用波長変換結晶
佐々木 孝友、 森 勇介、 吉村 政志 (工学研究科 電気工学専攻)
赤外線のレーザー光を紫外線に変えることができる特殊な単結晶です。
この結晶を使うと、小型で長寿命、広範囲の波長選択性などの優れた特長をもった装置を設計できます。
このような波長変換用の結晶を用いた新レーザーシステムの開発を解説します。
- 光でナノ構造を観(み)る、つくる、動かす
河田 聡、 早澤 紀彦 (工学研究科 応用物理学専攻)
最先端のレーザー技術を駆使(くし)して、赤血球より小さな牛を彫刻したり、
髪の毛の300分の1の太さのプラスチックのバネを伸び縮みさせたりすることができます。
「近接場光(きんせつばこう)」といわれる特殊な光でDNAを観るための顕微鏡の原理もわかりやすく説明します。
- 分子が主役の化学反応も姿と個性で左右される
笠井 俊夫、 大山 浩、 岡田 美智雄、 蔡 徳七(ちぇ どくちる) (理学研究科 化学専攻)
蜂(はち)の巣状の電場を利用して、真空中で方向のそろった分子の流れを発生させることができる装置を開発しました。
不明であった分子構造を決定できる新しい方法や、分子の姿と個性が化学反応に及ぼす「立体的な効果」などの最先端研究をわかりやすく説明します。
- 夢と希望のある大学を作る−阪大フロンティアの試み
鈴木 崇弘、 坂井 均也 (阪大フロンティア研究機構)
フロンティア研究機構は21世紀の工学系大学院のあるべき姿を他の大学に先駆けて構築しようとする挑戦的な試みです。
そこで推進されているナノサイエンスとナノテクノロジーおよび人間型ロボットに関する最先端研究プロジェクトの概略を紹介します。
懐徳堂資料展
会場:大阪歴史博物館2階第1会議室
懐徳堂(かいとくどう)は、江戸時代の1724年(享保9)に大坂に設立された学問所で、約140年にわたって、
近世日本の学術史と商道徳の育成に大きな影響を与えてきました。
その知的遺産は、(財)懐徳堂記念会を経て、現在、大阪大学の「懐徳堂文庫」に継承されています。
この資料展では、自由で批判精神にみちた懐徳堂の魅力を紹介いたします。
展示資料は、3種の性格に大別されます。第1は、懐徳堂の学者の肖像画、あるいは学者による書画などです。
ここでは、書や画といったリアルな資料から懐徳堂のイメージを実感してください。
第2は、懐徳堂の運営に関わる資料です。懐徳堂は大坂の有力町人によって運営された異色の学問所でした。
現在の学則にあたる定書(さだめがき)や定約(ていやく)、さらに義金(寄付金)簿、建立記録などからは、懐徳堂の経営の実態が明らかになります。
第3は、懐徳堂の学者たちによる研究成果です。
当時の主な学問であった経学(けいがく)(中国の儒教文献に関する研究)を中心に、文学、歴史、天文学、医学など、
合理的な実証主義にもとづくさまざまな業績が光彩を放っています。なお展示資料はすべて大阪大学懐徳堂文庫の所蔵です。
担当:文学研究科 湯浅 邦弘
協力:竹腰 礼子・井上 了
適塾資料展
会場:史跡・重要文化財 適塾
適塾(てきじゅく)は緒方洪庵(おがたこうあん)(1810〜63)によって蘭学(らんがく)塾として幕末の1838年(天保9)に大坂に創設され、明治時代には東京適塾も開かれました。
緒方洪庵は1862年(文久2)までの25年間を大坂で暮らし、多くの人材を育成し、幕府の奥医師として江戸へ下りましたが、
わずか10ヶ月で急死しました。適塾の知的遺産は緒方家および多くの門下生のご子孫から適塾記念会に寄せられ、
現在は適塾の建物(史跡・重要文化財)とともに大阪大学に継承されています。
この資料展は大阪大学総合学術博物館の設立記念展の一環として開催するもので、
緒方洪庵の人となりや大阪大学の自由な学風の源流となった適塾の教育の姿を紹介いたします。
展示の第1は、塾主の洪庵が医者として当時最も恐れられていた伝染病に、最新の医学知識や技術でどのように対処したのか、
さらに洪庵の医学教育の理念はどのようであったのかを明らかにします。
第2は、洪庵が愛用していた薬箱の中の薬を現在のくすりで再現することに挑戦した大阪大学のオリジナルの研究を紹介するとともに、
洪庵の医者としての情熱に思いをはせることにします。
担当:総合学術博物館 米田 該典
講演会「懐徳堂・適塾と大阪の教育研究」
日時/2002年10月12日(土)13時30分〜15時30分
会場/大阪歴史博物館4階講堂
主催/大阪大学総合学術博物館
共催/大阪歴史博物館
| 略歴: |
1930年 大阪市生まれ
1953年 大阪大学理学部物理学科卒業
1957年 理学博士
1965−1991年 大阪大学理学部教授
1981−85年 大阪大学理学部長・大学院理学研究科長
1989−91年 大阪大学理学部長・大学院理学研究科長
1991−97年 大阪大学総長
1997年 大阪大学名誉教授
2001年より財団法人国際高等研究所所長
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金森順次郎 先生
(かなもり じゅんじろう) |
| 受賞: |
1962年 朝日賞共同受賞、1975年山路ふみ子自然科学奨学賞、
1996年 日本学士院賞、1999年本多記念賞、1999年藤原賞ほか
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| 主な著書: |
『磁性』培風館、1969年
『教養の物理』(共著)共立出版、1993年
『固体−構造と物性−』(共著)岩波書店、1994年
『大阪と自然科学』国際高等研究所、2001年
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「大阪と自然科学―大阪のもう一つの伝統」
16世紀から17世紀にかけてガリレオやニュートンで代表される人たちが、思想上の葛藤を乗り越えて自然科学の基礎を築いた。
日本の場合は、18世紀に大阪の地で懐徳堂が、自然科学への思想上の準備をある程度整えた。また懐徳堂の庇護を受けた麻田剛立は、
実験観測を思考の基本として、真の自然科学者の域に達していた。
実際に麻田から伊能忠敬に至る科学者たちの事績は独創的な自然科学研究の芽ばえを示している。
一方、麻田の援助を受けて橋本宗吉が始めた大阪の蘭学は19世紀の緒方洪庵の適塾で頂点に達した。
蘭学は独創的な研究の域に達しなかったが、適塾生であった福沢諭吉の後年の思想活動は、自然科学の普及発展に大きく寄与した。
その後1931年の大阪帝国大学創設は、再び大阪から日本の自然科学の幾つかの新しい発展が生れるきっかけとなった。
講演では3世紀にわたる大阪の自然科学の伝統とその意義を解説したい。

21世紀のムーセイオンをめざして
本年4月1日、大阪大学に総合学術博物館が設置されました。
大阪大学は、江戸時代の学問所である懐徳堂と適塾からその精神とともに多くの資料や文化財を継承し、
さらに1931年の大阪帝国大学創立以来の教育研究の過程で多数の学術標本を収集保存してきました。
それらは先史時代の出土品から最新の先端研究の機器や標本にいたるあらゆる学術分野に関連する資料で、
総数166万点に達します。総合学術博物館は、これらの学術標本を一元的に管理し、大学の内外の人々に標本そのものを公開し、
その情報を提供することを主要な目的のひとつとしています。
また、特定の目的で収集された学術標本を別の視点や新たな方法で調査することにより、
これまで知られていなかった学術価値を見出すのも、大学博物館に課せられた任務です。
これまで「がらくた」と思われていたものの中に学問上の宝が隠されていることも、珍しくないからです。
さらに大学における研究成果をわかりやすい形で社会に提供することも、大学博物館の重要な責務でしょう。
大阪大学はこれまでも公開講座などにより学術成果を社会に還元してまいりましたが、博物館という常設の施設をもつことにより、
より充実したものにすることができると確信しています。
ギリシア神話では、人間のすべての知的活動は9名の女神ムーサMusa(複数はムーサイMusai)が支配するとされ、
彼女たちの神殿ムーセイオンmouseionは学術研究の殿堂を意味したということです。このムーセイオンが、
英語のミュージアムmuseumなどいわゆる「博物館」の語源となりました。大阪大学総合学術博物館は、
ミュージアム本来の機能である総合的な学術研究機関をめざしています。
計画中の総合学術博物館独自の施設を1日も早く建設し、上に述べた諸事業を実現させて、
学内学外の方々のご期待にそいたいと念願しています。
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