MOUコレクション 研究最前線

 ミュージアム・カフェ「坂」には、大阪大学総合学術博物館(MOU)の資料とその最新の研究成果を紹介するミニ展示コーナーが併設されています。コーヒーを片手にMOUでしか見ることのできない貴重な所蔵標本をお楽しみください。

 

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当館の教職員が行った最新の研究成果を資料とともに紹介しています。

 

 

ナウマンゾウの歯の病気!?ーCTで覗く化石の中の不思議発見ー

 

 MOUコレクションの中に、瀬戸内海の海底地層から見つかったナウマンゾウ(Palaeoloxodon naumanni)の化石標本がいくつかあります。当館の伊藤謙らによる最近の調査で、その1つが1938年に京都帝国大学教授の槇山次郎(まきやまじろう)によって報告されたナウマンゾウの下あご第三大臼歯(ヒトの“親知らず”)であることが確認され、2015年に滋賀県立琵琶湖博物館、日立製作所中央研究所らとの共同で標本が再分析されました。

 

 ナウマンゾウや現生アジアゾウの臼歯は、エナメル質と象牙質から成る板状の構造(=咬板、こうばん))が前後にいくつも並んだ形をしていますが、槇(報告したナウマンゾウの臼歯は異常な形をしており、国内では珍しい病理的な例ではないかと考えられています

 

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「ナウマンゾウの臼歯化石」

Palaeoloxodon naumanni、右下第二・第三大臼歯、大阪大学総合学術博物館蔵)

瀬戸内海産の更新世ナウマンゾウの臼歯化石。

向かって左側の第三大臼歯と右側の第二大臼歯(上下に出っ張った部分)が癒合(ゆごう)している。

 

 このナウマンゾウ臼歯の病因をつきとめるため、高出力の実験用XCT装置によって形態解析が行われました。CTは病院などで体の中の病気を発見するのに用いられていますが、化石や骨の内部構造を観察することもでき、そのX線画像から異常形態の原因を知ることができます。この研究では、変形(回転)した第二大臼歯が第三大臼歯の前方部に癒合したことがわかり、さらに歯が発生する初期段階で癒合(したことも明らかになりました。このように、XCT装置によって内部構造の観察ができるため、最近は医療の現場だけではなく古生物学の研究にも盛んに用いられています。

 

引用:

高橋啓一・馬場理香・北川博道・渡辺克典・伊藤謙(2015)瀬戸内海産異常形成ナウマンゾウ臼歯のCTによる再検討.化石研究会会誌,47巻(2号),48-54頁.