脳が心をうみだす
ともだちと話す、おいしいものを食べて幸せな気持ちになる、テニスをして汗をかく、悲しい映画をみて涙する、試験にむけてたくさんのことを記憶する、疲れて眠るー私たちの毎日は、さまざまな活動と体験に満ちていますが、このすべてのできごとを脳が裏で支えています。脳だけでは何も起きないけれど、脳がなければ、どのできごと一つも起きません。しかし、いったい、細胞の集まりである脳が、さらに言えば、細胞を構成している分子の集まりである脳が、どうやってこれらの心のできごとを生み出すのでしょう。 |
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ヒトの脳 |
サルの脳 |
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心のしくみをさぐる認知脳科学
知覚、認識、記憶、学習、感情、運動、言語、意識など「こころの世界のできごと」を、脳の構造とそこで起きているできごとで説明しようとする学問が認知脳科学です。脳や神経のつくりやはたらきやしくみを調べている神経科学の中で、たくさんの神経細胞が集まって行っている仕事のしくみをあきらかにしようとしています。この展示では、そのような学問の中で、とくに、「ものを見ているときに、脳の中で何が起きているか」を考えてみましょう。
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ものを見ることのどこが不思議?
「目を開けたらものなんて自然にみえてしまう。いったい、どこが不思議?心の秘密とどう関係あるの?」と思ったあなた、下の写真やテーブルの上のさまざまな錯視図形を見て下さい。 |
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目と脳で世界を見ている
目がみえるという言葉がありますが、ものを見るためには、目と脳が必要です。脳が大きな役割をもっていることは、上の「うずまきの錯視」を経験すれば良くわかります。目に映っている像は確かに同心円なのに、見えるものはうずまきなのですから。
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脳を見る
脳が世界を見ていることがわかったところで、今度は、脳を見てみましょう。
脳は、さまざまな機能を分担している領野とよばれる区域からなります。たとえば、図に示すのは、サルの脳の中で、ものを見るために使われている領野とその結合関係です。大阪や東京の地下鉄路線図よりも複雑ですね。30以上の領野とそれをむすぶ350近い結合があることが判明しています。 |
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脳では何が起きているのか
目の裏側には網膜という光を感じる神経組織があります。体の外から入ってきた光は、網膜の中の神経細胞に電気パルスをひきおこし、その電気パルスは脳の中に送られていきます。この電気パルスの「列」が、目の前に何があるかを伝えるもともとの信号です。脳は、暗号をとくように、その目からの信号を読みとき、いったい、目の前にある物体がどのような形や色や動きを持っているかを脳の中に(心の中に)、再現するのです。 |
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