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アフガニスタンの
失われた仏たち


総合学術博物館  肥塚 隆
撮影者のことば

アフガニスタンは、インド、イラン、ギリシア、ローマ、中国など各地の文明が伝えられたので、「文明の十字路」と呼ばれてきました。 しかしそれは、この地域にさまざまな民族が侵入し戦争が繰り返された結果なので、「戦乱の十字路」というべきだという人もいます。実際、1979年12月に旧ソ連軍が侵攻したことが原因となって永らく内戦が続き、一昨年にはバーミヤーンの大仏さえ破壊されてしまいました。最近ではアメリカとイギリスによるイラク攻撃の混乱のうちに、バグダット国立博物館などの文化財が略奪されたり壊されたということです。これらは「調和と共生」とは正反対の悲しむべき出来事でした。

ここに展示する写真は、1975年と1977年のいずれも8月から9月にかけて、成城大学の美術調査隊(高田修隊長)に参加した際に撮影したもので、これらの美術品のほとんどはその後の25年間に失われたと思われます。

これらをご覧になって、アフガニスタンに開いた東西文明交流の精華をしのぶとともに、異教徒間や異民族間の「調和と共生」を考えるきっかけとしていただければ幸いです。
  (協力:堀内カラー 川瀬敏雄)
大阪大学総合学術博物館 第2回企画展 「ジグソーのピースを探して」 INDEX