人間(1)
多人数共有型立体ディスプレイによる洪庵の薬箱の表示


北村 喜文、岸野 文郎(情報科学研究科 マルチメディア工学専攻)
多人数共有型立体表示装置(IllusionHole)
このインタラクティブな多人数共有型立体表示装置(IllusionHole)は、 3人以上の複数の利用者が、自由に動き回りながら、それぞれの視点位置から、ひずみもちらつきもない立体映像を、同時に、単一のディスプレイ上で観察することができる、従来にはない全く新しい立体表示装置です。非常に簡単なしくみでありながら、理想的な立体映像を表示することができます。

詳細情報 : http://www-human.ist.osaka-u.ac.jp/IllusionHole

しくみ
装置は、大画面ディスプレイと、中央部に穴が開いたディスプレイマスクから構成されます。ディスプレイマスクをディスプレイ面から適当な距離だけ離れた位置に設置することで、各利用者の視点位置に応じて、それぞれが異なるディスプレイ上の領域を観察することが可能になります。利用者の視点位置を検出し、これに応じて各利用者ごとの画像表示領域の位置と大きさを動的に計算し、この領域に左右両眼用に視差を持たせた画像を提示します。各利用者は、この領域を穴を通して観察すると、自分のための画像表示領域は観察することができますが、他人の画像表示領域はディスプレイマスクに隠されるために見ることができません。これにより、複数の利用者の視点移動に適切に対応したひずみのない立体映像を表示することができます。

応用
この装置では、すべての利用者から見て同一の場所に立体映像を結像させることができます。この特徴を活かして、複数の人が話し合いながら仕事をするような協調作業には最適のディスプレイと言えます。

医療現場での複数の医師らによる手術計画、患者家族や看護婦などに対する説明、複数のデザイナーと注文主などの意見交換によるインダストリアルデザイン、一般的なオフィスや会議室などでの発表や会議など、幅広い応用が考えられます。また、設計パラメータを変更することでさまざまなタイプのIllusionHoleを構成することができます。たとえば、数十人の利用者のための劇場型大スクリーン用IllusionHoleや、テーマパークやアミューズメント施設などで、移動するカートやメリーゴーランド、観覧車などに乗車する人に、移動に応じて刻一刻と変化する立体映像を見せるような用途にも利用できます。
大阪大学総合学術博物館 設立記念展 「いま阪大で何が? - 人間・地球・物質」 INDEX