人間(6)

スポーツにおける頭、顔、顎、口の役割とその外傷の予防


前田 芳信、 山田 純子、 三浦 治郎、 佐藤 元
(歯学研究科 口腔総合診療部)
スポーツとケガ
楽しいスポーツは安全から・・・

みなさんは、スポーツと歯科は大いに関係があるのをご存じでしょうか?

スポーツでの事故やケガというと、一流の選手やプロ選手を想像しがちですが、歯科に来院する頭や首のケガの約1割がスポーツに原因があるといわれ、さらに、その40%が歯に関係しているといわれています。
どんなスポーツがケガをしやすいのでしょうか?

一般的には、アメリカンフットボールやラグビーやボクシングなどの格闘技がイメージとして浮かびますが、実際には、人気のある野球やバスケットボール、サッカーなどでも顔や口にケガをする例を非常に多く見かけます。この場合には、相手との接触だけでなくボールやバットのような器具でのケガが多くなります。
どんなところをケガするのでしょうか?

一番多い症例は、上の前歯を打ったり(打撲)、歯が折れたり(破折)、ぐらついたり(脱臼)、ひどい場合には抜け落ちることさえあります。もちろん激しくぶつかると顔やアゴの骨折が起こることもあります。

マウスガード
マウスガードで安全にスポーツを!!

“マウスガード”は、“マウスピース”あるいは“マウスプロテクター”と呼ばれ、激しい格闘技として知られたK-1やボクシングなどの選手のように、ケガの多いスポーツ種目の選手が口にはめています。

口のケガを予防するため、通常は上アゴに装着し、歯を被うようなU字型をしており、衝撃を吸収する柔らかい素材で出来ています。
を研究することによって、薬が効くしくみを詳しく知ることができると考えています。


どうやったら手にはいるの??

簡単なのは、スポーツ用品店で購入することです。お湯につけて軟化させて口の中で成形するマウスフォームドタイプが販売されています。

これは、熱可塑性(熱で軟らかくなる)の樹脂で出来ています。
もう一つの手段としては、歯科医院で作ってもらうことです。

これは、カスタムメイドタイプといって、歯型と噛み合わせをとってもらって作成するため、口にぴったりして、効果も高く、付けごこちもマウスフォームドタイプよりも断然良好になります。

ケガの予防
ケガ発生のメカニズム

ケガを予防するためには、歯が折れたり口の中が切れたりした時に、どんな力がどのように働いているかを解明することが大変重要です。

最新の研究では、コンピュータを使ったシミュレーションにより前歯に様々な方向から力を加え、歯のまわりの組織にどんな力がかかるかを解明する研究が行われています。図5は、前歯の先端に前方向から力を加えると、歯の根の先端部の骨に大きな力がかかることを示しています。青い線が密集しているほど大きな力がかかっていることを示しています。
新しい材料の開発

ケガの予防の研究でもう一つ重要なのは、衝撃を効率よく吸収するマウスガード素材の開発です。開発中のハイブラーという新素材は、衝撃を受けた後、伝わった振動を急速に減衰させることができるという特徴をもっています。

現在、この新素材を使って理想的なマウスガードを作る研究が進められています。
大阪大学総合学術博物館 設立記念展 「いま阪大で何が? - 人間・地球・物質」 INDEX