地球(11)

燃える氷!?―メタンハイドレート


大垣 一成 、 菅原 武 (基礎工学研究科 化学系専攻)
燃える氷!?・・・メタンハイドレート
氷が燃える!?

氷は燃えません。でも右の写真の燃えている物質は、氷のように見えますね。これは氷ではなく、水とメタン(都市ガスの主成分)からできたメタンハイドレートという物質です。ここ数年世界中で注目されているメタンハイドレートとはどのようなものでしょうか?
ガスハイドレートとは?

ガスハイドレートは、気体包接化合物とも呼ばれるように、気体分子( )が水分子( )で作られた「カゴ」のなかに包み込まれてできた化合物です(右図)。メタンハイドレートは、都市ガスの主成分であるメタンが包み込まれた化合物で、暖めると分解し、カゴの中からメタンが出てくるので火をつけると燃えるのです。

エネルギー資源・地球環境問題との関連
地球環境問題の一つに地球温暖化があります。その一つの原因は大気中の二酸化炭素の増加です。この二酸化炭素を海に隔離することができれば、地球の温暖化をかなり防ぐことができるはずです。「海」と一言にいっても、下図のように深さによって、二酸化炭素の状態や密度が変わるため,隔離する方法も変わってきます。広範囲の海の汚染や、隔離してから大気へ戻る時間を考えて、我々はハイドレートを利用した深さ6000m以上の深海底貯蔵を提案しています。6000m以上の深海底で、はじめて二酸化炭素ハイドレートの密度が液体二酸化炭素より小さくなるため、ハイドレートがお鍋の「ふた」の役目をして、その下に効率良く液体の二酸化炭素を貯蔵することができるのです。

エネルギー資源・地球環境問題との関連
エネルギー資源の枯渇が問題視されている中、下の世界地図の海底下永久凍土下に天然ガスハイドレート(主成分はメタン)が存在することが確認されています。このメタンハイドレートからメタンを採掘する方法の一つとして、下図の方法を提案しています。二酸化炭素がメタンよりカゴの中に入りやすい性質を利用したもので、エネルギー資源としてメタンを採った場所に地球温暖化の原因物質とされる二酸化炭素をハイドレートとして貯蔵できる一石二鳥の採掘方法です。
また、天然ガスはLNG(液化天然ガス)の形で日本にタンカーで運ばれています。天然ガスを液化するには、−160℃という極めて低い温度にしなくてはいけません。LNGの代わりに下写真のような球状のハイドレート塊で運搬すれば、より温和な条件で運搬することができます。
大阪大学総合学術博物館 設立記念展 「いま阪大で何が? - 人間・地球・物質」 INDEX