研究紹介
研究・教育部
資料基礎研究系
資料基礎研究系は薬学を専門とする教員で構成されており、薬用資源(生薬)の品質に関する国際的標準化と持続可能な安定供給を実現するため、
- 伝統医療文化に根ざした本草学的基原の解明並びに感染症パンデミック治療戦略の検証
- 微量並びに非侵襲的解析手法による生薬品質評価法の開発と文化財標本資料への応用
- 環境保全に向けた植物相の環境社会学的調査を学際的領域で推進しています。
特に『緒方洪庵の薬箱』や『森野旧薬園と松山本草』は、温故知新の情報を含蓄する貴重な医療文化財で、意義の解明と恒久的保存研究を各所蔵先と連携して行っています。
現在、科学研究助成・基盤Bの代表で『薬用資源の文化財分析法を用いた新規標準化インデックスの探索』(2010-12)を、また基盤B分担で『食品産業とバイオ産業の融合による栄養健康産業クラスターの構築に関する国際比較研究』(2011-13)を展開しています。
他の社会還元・啓発の成果として、サスティナビリティ科学技術開発工房デザイン『待兼山発タンポポプロジェクト:地域に活きるサスティナブル社会の構築を目指して(2007-9)』や特別展『21世紀の薬箱:新しい医療文化の形成(2008)』などがあります。
資料先端研究系
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance; NMR)分光法をはじめとする物理化学的な研究手法を文化財科学に応用するための基礎研究を行っています。
標本資料の原子・分子レベルの成分分析やナノメートルレベルでの構造解析を通じて、石材、煉瓦、埴輪、陶磁器、漆器、琥珀などのさまざまな標本資料の産地・製法による違いを明らかにするとともに、標本資料に形成される細孔への分子吸着や吸蔵、それによる経時変化を解明し、文化財資料の保存科学への展開を目指しています。
石材、煉瓦、埴輪、陶磁器などの多孔質標本資料のモデル物質となる多孔性物質の探索や、それらを用いた分子吸着現象の基礎研究など行っています。
資料情報研究系
情報資料研究系は主に歴史学や芸術学を専門とする教員によって組織されており、博物館における標本資料の中でも特に歴史資料や美術品などに関わる調査研究を行っています。
近年は特に大阪大学が立地し、大学自体の文化的基盤でもある古来からの大阪の文化に関わる調査研究を集中的に行っています。
その成果は例えば2009年に開催された特別展「昭和12年のモダン都市へ 観光映画「大大阪観光」の世界」や博物館叢書『映画「大大阪観光」の世界』などで公開しました。
博物館での研究を希望する皆さんへ!
当館の教員は本学大学院教員(文学研究科・理学研究科・薬学研究科)を兼務しています。
博物館での研究を希望する方は、それぞれの研究科を受験してください。
入試情報は各研究科で異なりますのでご注意ください。
大学院入試情報
※進学を考えている方は、必ず事前に希望する教員に連絡してください。
資料部
資料部では、博物館教員と各部局に所属する兼任教員とが連携し、所蔵する学術標本資料の保存・管理・活用を行っています。具体的な成果として、真空管式計算機の重要科学技術史資料への登録(2008)、国立科学博物館「化学者展」(2011)への出品などが挙げられます。
また学内外から資料の寄贈・寄託を積極的に受け入れ、学術・地域にとって重要な資料保全機能を担っています。
2010年には「光明皇后発願 出曜経 巻第四」の寄贈、2011年には吉原治良(具体美術協会)の資料の寄託を受けました。
データベースの構築
学術標本資料の情報を一元的に管理し、学内の教職員や学生はもとより、学外の方々にもネットワーク経由で容易に情報を構築・共有できるような情報登録・検索データベースシステム(博物館データベースシステム)を整備・公開しています。
科学研究費補助金の研究成果公開促進費の交付等も受け、すでに合計約2万件以上のデータを公開しています。
博物館叢書
総合学術博物館では、データベース化や整理、再活用をすすめた学術標本資料類の公開と、それに基づく学内外の研究者の研究成果の公表のために、「大阪大学総合学術博物館叢書」シリーズを刊行しています。