台詞が見た戦争
〜森本薫『女の一生』から〜
表現を生業とする人びとは戦争のさなか、何を考えどのように作品を生み出したのでしょうか。森本薫(1912〜1946)は、大阪府出身の新劇を代表する劇作家です。彼は1946年に34歳という若さでこの世を去る直前、代表作となる『女の一生』を書き上げました。『女の一生』は、情報局からの依頼で国民の戦意高揚のために制作された作品であり、様々な制限のもと書かれたのにもかかわらず、そこには森本の戦争に対する秘めた想いが見え隠れします。
本展覧会は、森本薫の『女の一生』を紐解くことで、ある表現者が戦争という現実に直面したとき、それをどう捉え何を表現するかに迫ります。まずは、森本の生涯を概観し、第1章では『女の一生』のあらすじを紹介するとともに、彼が登場人物に喋らせた台詞や脚本改訂によって生じた変更点から、この作品に込めた真の想いを読み解きます。第2章では自己=表現者と社会=戦争のはざまで、森本は劇作家としてどのような選択をしたのか、もしくは、せざるを得なかったのかについて、彼の直筆書簡や彼を知る人物の証言をもとに紹介します。第3章では、『女の一生』という演目のあり方が、戦中の初演から現代に至るまでいかに変容してきたかを辿るため、上演ポスターなどを中心に展示し、私たちがいま森本薫と『女の一生』に向き合うことの意味を検討します。
開催趣旨
2010年度より大阪大学で開講している博物館学(学内実習)では、実習の一環として受講生がいくつかの班に分かれ、大阪大学が所蔵する資料を活用して模擬展示を企画実施しています。2014年度からは、模擬展示のうち優秀な展示を一般に公開することにしました。今年度は大阪大学が所蔵する「森本薫関係資料」を用いて企画された展示を公開いたします。
出品内容
・森本薫遺品(直筆書簡、ロイド眼鏡、万年筆)
・『女の一生』舞台関連資料(チラシ、ポスター、パンフレット、舞台写真 ほか33点)
展示構成
第1章 『女の一生』の台詞と戦争
第2章 森本薫と戦争
第3章 これからの『女の一生』
会場
総合学術博物館 歴史展示室(大阪大学会館3階)
会期
2019年11月21日(木)- 2019年12月10日 (火)
主催 大阪大学総合学術博物館
協力 大阪大学21世紀懐徳堂
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