展示内容
1.
変わる里山:北摂の絵図と地図にみる景観変化
2.
貨幣と空間,そして時間−藩札の形成,流通,銷却:故作道洋太郎名誉教授遺贈資料より−
3.
物質科学へのアインシュタインの功績
4.
この世で最も重い原子を求めて
5.
漢方薬ナビゲーション:時空を超えて科学する心
6.
宇宙から見た世界の雷活動
7.
太陽エネルギーの有効利用
8.
繰り返しから生まれる複雑さ
9.
ナノテクの4次元空間=ナノ3次元+アト秒
10.
PDBj: Protein Data Bank japan (日本蛋白質構造データバンク)
11.
時を止め、空間を作る
12.
琥珀にひそむ時空のなぞ
13.
時間と空間の知覚:知と行動の科学
14.
曲面の世界
15.
出版活動
3. 物質科学へのアインシュタインの功績
理学研究科 / 奥村 光隆・北河 康隆
カザニアの花粉の顕微鏡写真
アインシュタインは、一般的に知られている宇宙の特殊相対性理論やノーベル賞を受賞することとなった光電効果の理論のみならず、様々な分野において偉大な功績を残している。
そこで、それらの中からミクロな世界の特殊性が目で見える形で現れるブラウン運動や原子の相対論効果についてお話をします。
ブラウン運動とは
今から約180年前、イギリスの植物学者ブラウンは、顕微鏡で水中に漂う花粉を観察している時に、奇妙な現象を発見しました。まるで花粉(その中の粒)が生きているかのように不規則な運動をするのです(図1)。この運動を現在では『ブラウン運動』と呼んでいます。
その後、アインシュタインは、溶液の理論などを組み合わせることにより、ブラウン運動を理論的に解き明かす事に成功しました。この理論は、原子の存在を仮定するものでした。今では原子の存在を疑う人はいませんが、当時は疑わしき存在だったのです。アインシュタインの理論の証明は、当時、起こっていた原子の存在論争にも決着をつけるものでした。
ブラウン運動はランダムな熱運動をしている溶媒(水)分子が溶質(花粉)粒子に衝突することによりおこることが現在では分かっており、微細粒子であれば様々なもので見られます(図2)。
(図1)
(図2)
一定時間ごとの粒子の位置を直線でつないだ図
ブラウン運動しているラテックス粒子
(直径は1μm)
なぜ水銀は液体なの?
相対論効果が、影響するのはなにも宇宙空間だけではありません。
原子核を太陽、電子を地球と考えると非常に重たい核の周りを周回する電子は非常に速い速度で運動することになります。
その結果電子にも相対論効果が働いて、水銀のように重い原子では最外殻の電子にも相対論の影響が出て、電子が原子核により近い(安定な)軌道を回ります。
その結果、水銀原子は他の水銀原子と相互作用しにくくなり室温付近では固体にならずに液体でいることが可能になります。
水銀を使った大気圧計
金はなぜ金色なの?
相対論効果では、水銀を液体にするだけでなく、物質の色も変化させます。
これは、物質の色が、光の吸収や反射によって決定されるからです。
この光の吸収は、物質内の電子のある状態から別な状態への変化に対応します。
銀では吸収される光の波長が紫外線であるために金属結合に由来する自由電子による光の反射により銀色に輝きますが、金では、大きな相対論効果によりこの吸収波長が可視光領域になり金は金色になります。
周期律表で並んでいる白金、金、水銀の室温での状態はこのように全く異なる
白金と金の延べ棒と水銀
目で見えない原子分子の世界で起こる小さな変化が目で現れる形で物質の運動や性質を変化させている。このような現象の解明にはアインシュタインの功績がその後の化学の発展に大きく寄与している。
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大阪大学総合学術博物館 第4回企画展 時空のなぞ
〜アインシュタイン・イヤーによせて
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