1.
変わる里山:北摂の絵図と地図にみる景観変化

2.
 

3.

  物質科学へのアインシュタインの功績

4.
  この世で最も重い原子を求めて
 

5.
  漢方薬ナビゲーション:時空を超えて科学する心

6.
  宇宙から見た世界の雷活動
 

7.
  太陽エネルギーの有効利用
 

8.
  繰り返しから生まれる複雑さ
 

9.
  ナノテクの4次元空間=ナノ3次元+アト秒

10.
  PDBj: Protein Data Bank japan (日本蛋白質構造データバンク)

11.
  時を止め、空間を作る
 

12.
  琥珀にひそむ時空のなぞ
 

13.
  時間と空間の知覚:知と行動の科学

14.
  曲面の世界
 

15.
  出版活動
 
5. 漢方薬ナビゲーション
―時空を超えて科学する心―

大阪大学大学院薬学研究科 / 高橋 京子、東 純一

国民の半数近くが漢方薬を飲んだ経験がある現代。しかしマスコミをにぎわす生薬にからむ副作用報道も後を絶ちません。

『漢方薬の定義を知っていますか?』
『漢方薬とサプリメントの違いを知っていますか?』
『漢方薬を購入・服用するときに注意することは?』

数千年にわたるヒトでの使用経験を経て淘汰され、時空を超えて伝承されてきた漢方薬。その漢方薬を役立てるために知って得する知識や、適正使用に必要な科学的解析・評価の試みを紹介したい。

一般用医薬品に占める漢方製剤の比率
生薬の異物同名品のリスク(アリストロキア腎症の場合)
アリストロキア酸はアリストロキア属の植物に含有される成分で、腎障害を
引き起こすことが知られている。


日本において、現在アリストロキア酸を含有する生薬および漢方製剤で、医薬品として承認許可を受けたものは、製造・輸入されていない。
しかし、アリストロキア酸を含む漢方薬の個人使用によると疑われる腎障害が報告されている。

日本の薬局方に適合する生薬が使用されていれば問題は生じないが、生薬の呼称は国により異なる場合があり、取扱いについては注意を要する。

構成生薬
(高橋京子他:日本薬学会第119年会
Vol.4 Sup. 161, 1999)

Aristolochiaceae(ウマノスズクサ科)
キダチウマノスズクサ
Lardizabalaceae(アケビ科)
アケビ
関木通抽出液グラフ
化学構造式
Uejima E., Takahashi K.et.al., Jpn. J. Clini. Pharmacol. Therp., 31 : 639 699, 2000
 
アリストロキア酸を含有する生薬・漢方薬について
日本産(日本薬局法規定):いずれもアリストロキア酸を含有しない
薬材名
モクツウ(木通)
サイシン(細辛)
ボウイ(防己)
モッコウ(木香)
基原植物
Lardizabalaceae
(アケビ科)
Akebia quinata Decaisne1
A. trifoliata Koidzumi
Aristolochiaceae
(ウマノスズクサ科)
Asiasarum Sieboldii F. Maekawa2
A. heterotoropoides F.M.var.
Menispermaceae
(ツヅラフジ科)
Sinomenium acutum
Rehder et Wilson
Compositae
(キク科)
Saussurea lappa Clarke
使用部位
つる性の茎
根及び根茎
つる性の茎及び根茎
中国・その他産:アリストロキア酸含有
薬材名
木通・関木通・淮通
・川木通
細辛
防己・広防己・木防己
木香・青木香・南木香
基原植物
Aristolochiaceae
Aristolochia Manshuriensis
Kom., Lardizabalaceae
Aristolochiaceae
Aristolochiaceae
Aristolochia fangchi Wu3
Menispermaceae
Aristolochiaceae
Aristolochia contorta Bge,
A. debilis Sieb4, Compositae
使用部位
つる性の茎
全草(地上部に含有)
つる性の茎及び根茎
薬草イラスト
難波恒雄著:原色和漢薬図鑑(上、下)、保育社(大阪)1980

1. 漢方薬はクスリである

2. どんなクスリにも副作用(リスク)がある

3. リスクを最小限にして、
  効き目を最大限にすることが重要 (医師・薬剤師の服薬指導が必要)

4. 病気の予防や回復にも有効である

5. 生薬は天然物に由来するため品質は多様である

6. 健康食品・サプリメントは食品であり、
  クスリ以上の効き目はない (過剰な広告に注意)